・映画の要約
『メイズ・ランナー』(原題:The Maze Runner)は、2014年に公開されたアメリカのSFアクションスリラー映画。監督はウェス・ボール。原作はジェイムズ・ダシュナーによる同名ベストセラー小説であり、若者たちが巨大な迷路に閉じ込められた状況から脱出を図るサバイバルストーリーである。舞台は謎の高い壁に囲まれた「グレード」と呼ばれる草原地帯。記憶を失った少年トーマスがエレベーターでその場所に送られてきたところから物語は始まる。そこで彼は、同じように記憶を失った少年たちの共同体に出会い、やがて「迷路」の秘密と外の世界の真実を知ることになる。
・映画の時間
上映時間は 113分。
・ネタバレ(起承転結)

起:閉ざされた世界
トーマスは名前以外の記憶を失った状態で、暗いエレベーターに乗って地上へと送り込まれる。目を開けた先は、草原と高い壁に囲まれた奇妙な空間「グレード」。そこには同じように記憶を失った少年たちが暮らしており、それぞれが役割を持って共同生活を送っていた。壁の向こうには巨大な迷路があり、そこへ行くことを許されているのは「ランナー」と呼ばれる者たちだけだった。
承:希望と恐怖
トーマスは好奇心と正義感からランナーの役目に興味を持ち、リーダー格のミンホと行動を共にするようになる。迷路の中には「グリーバー」と呼ばれる恐ろしい機械生物が徘徊しており、夜になると迷路の門が閉じる。ある日、トーマスは襲われた仲間を助けるために迷路の中に飛び込み、夜明けまで生き延びるという前代未聞の行動を取る。その勇気により彼は正式にランナーとして認められる。

転:真実への扉
トーマスの到着から間もなく、グレードには初めての少女テレサが送られてくる。彼女はトーマスと同じく過去の記憶を失っており、彼の存在に何かを感じ取っているようだった。彼らは迷路の中に隠された装置や文字を手がかりに「出口」の存在を突き止めるが、同時に迷路を管理している組織「WCKD(ウィケッド)」の影も見え始める。組織はウイルスによって崩壊した世界で「生存実験」を行っていたのだ。

結:脱出と新たな謎
トーマスたちは犠牲を払いながらも迷路の中央部に到達し、グリーバーの巣を突破して脱出する。彼らはそこで映像メッセージを発見し、自分たちが人類再建のための実験対象であったことを知る。希望と絶望が入り混じる中、彼らは救出部隊に導かれ外の世界へ出る。しかしその先にも新たな試練が待ち受けており、物語は次作『メイズ・ランナー2:砂漠の迷宮』へと続く。
・この映画と似ている映画
- ハンガー・ゲーム:閉ざされた環境で若者たちが生き延びようとするディストピア構造。
 - ダイバージェント:若者が理不尽な制度に抗う近未来SFアクション。
 - キューブ:限られた空間で謎を解きながら生存をかけるサスペンスの原型。
 
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・総評
『メイズ・ランナー』は、閉ざされた環境での生存劇を軸に、スリルと人間ドラマを融合させた完成度の高いSFアクションである。まず評価すべきは、その世界観の構築力だ。高い壁に囲まれた草原、迷路の巨大な構造物、そして未知の生物グリーバー。CGを多用しながらも、手触りのある映像でリアリティを保っている。観客はまるで自分も迷路に迷い込んだかのような緊迫感を味わえる。
主演のディラン・オブライエンは、記憶を失った青年の戸惑いと勇気を自然に演じ、物語の推進力となっている。仲間のミンホやニュート、リーダー格のアルビーなど、登場人物それぞれに性格的な奥行きがあり、チームとしてのドラマが機能している。特に、仲間との信頼や裏切り、恐怖と希望が交錯する場面では、若者たちの純粋さと生存本能が鮮やかに描かれる。
物語構成は比較的シンプルだが、テンポの良さとビジュアルの迫力で最後まで飽きさせない。謎をすべて明かさず次作へと引き継ぐ終わり方も巧みであり、シリーズ全体の導入として非常にバランスが取れている。ただし、原作を読んでいない観客にとっては、用語や背景の説明が不足していると感じる部分もあり、初見では混乱する可能性がある。
本作の魅力は、閉鎖空間での秩序と混沌の対比、そして人間の本質的な「自由への渇望」にある。単なるアクションではなく、共同体のルールや倫理、指導者の資質といったテーマも織り込まれている点が深い。若者たちが命を懸けて出口を探す姿は、現代社会における閉塞感や希望のメタファーとしても読むことができる。
総じて『メイズ・ランナー』は、若者たちの勇気と知恵、そして連帯の力を描いたエンターテインメントとして高く評価できる作品である。派手なアクションの裏にある「何のために生き延びるのか」という問いが、観る者の胸に静かに残る。シリーズを通して成長していく彼らの姿を見届けたくなる第一章だ。
・スタッフキャスト
監督:ウェス・ボール
脚本:ノア・オッペンハイム、グラント・ピアース・マイヤーズ、T.S.ノーリン
原作:ジェイムズ・ダシュナー「メイズ・ランナー」
製作:エレン・ゴールドスミス=ヴァイン、ウィク・ゴッドフリー
撮影:エンリケ・チェディアック
音楽:ジョン・パエザーノ
出演
トーマス:ディラン・オブライエン
テレサ:カヤ・スコデラリオ
ニュート:トーマス・ブロディ=サングスター
ミンホ:キー・ホン・リー
アルビー:アムル・アミーン
ギャリー:ウィル・ポールター
チャック:ブレイク・クーパー
他:パトリシア・クラークソン ほか
  
  
  
  
