・映画の要約
『帰ってきたあぶない刑事』は、2024年に公開された日本のアクションコメディ映画であり、1986年のテレビドラマ『あぶない刑事』から続くシリーズとしては実に8年ぶりの新作となった。主人公はおなじみのダンディ鷹山とセクシー大下。ニューヨークで探偵業を営んでいたふたりが再び横浜へ戻り、いつもの軽妙さと爽快なアクションを武器に、新たな事件へと挑む。シリーズの根強いファンが長年待ち望んだ復活作であり、年齢を重ねたタカとユージが、変わらない掛け合いと現代的テーマの中で新たな魅力を放つ。
物語の主軸には、横浜で起きた不可解な銃撃事件と、タカの“娘”とされる女性の登場が置かれている。親子関係の真偽をめぐる物語、犯罪組織の策謀、懐かしさと新しさが融合した横浜の街の景観が、シリーズの世界観を再び彩る。1980年代から続く「あぶデカ節」は健在で、映像技術やテンポは現代作品へとアップデートされながらも、ファンが求めるスタイルがしっかり残されている。
・映画の時間
上映時間は 118分。
・ネタバレ(起承転結)
起:帰ってきた名コンビ

ニューヨークで探偵業をしていたタカとユージは、横浜で元同僚が負傷した事件をきっかけに帰国する。事件はプロの犯行を思わせるもので、警察内部でも緊張が高まっていた。そんな中、タカは「自分が娘だ」と名乗る女性・彩夏と遭遇する。タカは身に覚えがないまま困惑しつつも、彼女を放っておけず面倒を見ることにする。ユージはその状況を面白がりながらも、事件と彩夏の存在に何か引っかかりを覚える。
承:事件の核心へ
横浜で次々と発生する銃撃事件は、ある国際的な犯罪組織の活動と結びついていることが判明する。タカとユージは旧知の仲である港署の面々と協力し、背後に潜む陰謀を追う。彩夏は過去の家庭環境に秘密があり、その背景が事件ともつながっている可能性が浮上する。タカは彩夏を守ろうとしつつも、父親としてどう向き合えばいいのか葛藤する。ユージはその横でタカを茶化しながらも、いつものように相棒として支える。
転:裏切りと真実

事件の裏には、犯罪組織と政財界の癒着、そして彩夏を利用しようとする勢力が存在していた。タカとユージは敵の罠にかかり、追い詰められるが、二人の“無鉄砲さ”と“勘”が功を奏し脱出に成功する。彩夏の出生の秘密も明らかになる。タカの娘である可能性は揺らぎながらも、彩夏が事件の鍵を握る人物であることだけは確かだった。父と娘かもしれない二人の関係は、複雑な感情と共に深まっていく。
結:あぶ刑事の帰還
最終決戦は横浜の街を舞台にしたカーアクションと銃撃戦で展開される。タカとユージは若手刑事たちと協力し、犯罪組織の計画を阻止する。彩夏も覚悟を決め、自らの過去と向き合う。事件が終わった後、タカは彩夏との関係を「父と娘として歩めるかどうかは、これから決めよう」と語る。ユージはそんな二人をからかいながらも、これまでと変わらぬ友情を示す。物語は、二人が再び横浜の街を歩き出す姿で締めくくられ、シリーズらしい軽やかな余韻を残して幕を閉じる。
・この映画と似ている映画
- 相棒 劇場版
ベテラン刑事コンビが都市型犯罪に挑む構造が近い。 - ダイ・ハード4.0
年齢を重ねた主人公が現代犯罪に立ち向かうアクション映画。 - リーサル・ウェポン
異なる性格の相棒同士が事件を通じて深い絆を見せる定番バディムービー。
・この映画を見れるサービス
※配信状況は変更になる可能性があります。
・総評
『帰ってきたあぶない刑事』は、長年愛されてきたシリーズが現代に戻ってきた喜びをそのまま作品のエネルギーに変えたような映画である。シリーズを象徴する軽妙な掛け合い、コミカルな空気、決してリアルさだけに偏らない“あぶデカらしさ”が、2024年の新作であっても健在なのがまず嬉しい。どれだけ時代が変わっても、タカとユージというバディの存在が作品の核であることを改めて実感させてくれる。
本作の挑戦は、懐かしさだけに頼らず、現代的なテーマやキャラクターを導入した点にある。タカに娘かもしれない女性が現れ、その関係性を探るという物語は、シリーズになかった新しい要素を加えている。若い世代や現代社会の問題を盛り込みながらも、作品全体のテイストは軽快で、決して重すぎない。長年シリーズを見てきたファンにとっては、タカが父親という役割をどのように受け止めるかを考えるだけでも興味深いポイントとなる。
横浜の街を舞台にしたアクションは健在で、銃撃戦や車の追走劇には「帰ってきた感」がしっかりある。60代を過ぎた主演二人がアクションの多くをこなしており、その存在感はさすがとしか言いようがない。若手キャストとの掛け合いも自然で、シリーズの受け継がれ方を感じさせる。
一方、シリーズ特有の“ゆるさ”も依然として残っており、犯罪組織の描写や事件の理屈がやや粗い部分もある。しかし、それすら「あぶデカらしさ」のひとつとして受け入れられる。リアルな刑事ドラマでもハードボイルド映画でもなく、独自のジャンルとして成立しているのが『あぶない刑事』であり、今作もその系譜を誠実に受け継いでいる。
総合すると、『帰ってきたあぶない刑事』は過去作への愛情と現代的アップデートを絶妙に融合させた、シリーズ新章として非常に満足度の高い作品である。タカとユージのコンビがどれだけ時間を経てもなお輝きを失わないことを示した一本であり、今後も彼らが帰ってきてくれる可能性を感じさせる余裕のある締め方となっている。シリーズファンはもちろん、初めて観る人にも入りやすい一本である。
・スタッフキャスト
監督:原廣利
脚本:小山正太、山本透
音楽:高橋哲也
出演
鷹山敏樹(タカ):舘ひろし
大下勇次(ユージ):柴田恭兵
町田透:仲村トオル
真山薫:浅野温子
彩夏:早乙女ゆう
ほか多数

