・映画の要約
『メイズ・ランナー3:最後の迷宮』(原題:The Maze Runner: The Death Cure)は、2018年に公開されたアメリカのSFアクション映画で、『メイズ・ランナー』三部作の最終章にあたる。監督はシリーズを通してウェス・ボールが務める。物語は、仲間を救うために再び巨大組織WCKD(ウィケッド)に立ち向かうトーマスたちの戦いを描く。感染症「フレアウイルス」が人類を滅亡の淵に追い込む中、WCKDは少年たちの血液を利用して治療薬を作ろうとしていた。トーマスは捕らえられたミンホを救い出し、テレサやニュートらとの運命的な選択に直面する。
・映画の時間
上映時間は 143分。
・ネタバレ(起承転結)
起:救出作戦の始まり

物語は、トーマスたちが列車で輸送されている捕虜たちを救出する場面から始まる。目的は、WCKDに捕らえられたミンホを取り戻すこと。砂漠を横断するスリリングなカーチェイスの末、トーマスたちは列車を襲撃するが、ミンホは別の施設に移送されていたことが判明する。仲間のフライパンやブレンダ、ホルヘとともに、彼らは「ラストシティ」と呼ばれる要塞都市へ向かうことを決意する。
承:崩壊する世界
道中、感染が進むニュートの症状が悪化し、仲間の間に緊張が走る。ブレンダは以前の実験で得た抗体を持っており、部分的な治療法を見つけていたが、完全な解決には至っていなかった。トーマスは、WCKDの内部に潜入するしか方法がないと判断する。彼らは旧友ギャリーの協力を得て、要塞都市への侵入を試みる。
転:テレサとの再会
WCKD内部では、テレサが研究者として活動を続けており、フレアウイルスの治療に執念を燃やしていた。彼女はトーマスの血液こそが鍵になると確信しており、組織のリーダーであるエヴァ・ペイジ博士と対立する。トーマスが潜入したことで、テレサは揺れ動く。彼を逃がすか、世界を救うか――倫理と愛情の狭間で彼女は決断を迫られる。

結:終わりと始まり
トーマスたちはついにミンホを救出するが、その代償としてニュートを失う。感染に侵された彼の死は、仲間たちに深い傷を残す。クライマックスでは、トーマスとテレサが研究施設でフレアウイルスの治療薬を完成させるが、爆発の中でテレサは命を落とす。生き残った仲間たちは、海辺の安全地帯で新しい生活を始める。ラストシーンでは、トーマスがテレサを偲びながら仲間に囲まれ、長い戦いの終焉を迎える。犠牲と希望、再生の物語として物語は静かに幕を閉じる。
・この映画と似ている映画
- ハンガー・ゲーム FINAL:体制に立ち向かう若者たちの最終決戦を描くディストピア映画。
- ダイバージェント FINAL:閉鎖社会からの脱出と人類再生を描いたSF終章。
- アイ・アム・レジェンド:感染と治療、人間の孤独をテーマにしたサバイバルドラマ。
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・総評
『メイズ・ランナー3:最後の迷宮』は、シリーズ完結編として壮大なスケールと感情的な深みを兼ね備えた作品である。前2作が築いた閉鎖空間のサバイバルと陰謀の要素を超え、今作では「人類の再生」と「個人の犠牲」というより大きなテーマが描かれる。ウェス・ボール監督はアクションのスピード感と映像美のバランスを維持しながら、キャラクターの成長と関係性に焦点を当てている。
アクションシーンはシリーズ最高レベルの完成度を誇る。特にラストシティでの銃撃戦や列車襲撃、崩壊する研究施設での逃走劇は、カメラワークと編集の緊張感が秀逸だ。映像のテンポが速くとも物語の軸がぶれず、視覚的な満足度が高い。また、感染者クランクたちの登場もホラー的緊張を維持し、シリーズのジャンルを超えたエンターテインメントとして機能している。
物語面では、テレサの葛藤とトーマスの信念が中心となり、前作までの謎がすべて回収される構成になっている。テレサの行動は裏切りでもあり愛情でもあり、観客に複雑な感情を残す。彼女の最期の選択は、シリーズ全体のテーマである「何を犠牲にして人を救うのか」という問いへの一つの答えである。ニュートの死もまた、理想と現実の間に立たされた登場人物たちの成長を象徴している。
ただし、作品全体のテンポはやや長く、登場人物の多さによって焦点が分散する部分もある。とくに中盤の潜入パートや内部抗争の描写は少し冗長に感じる観客もいるだろう。しかし、最終章としての達成感は十分であり、シリーズを通して見てきた者にとっては感情的な報いがある。
総じて、『メイズ・ランナー3:最後の迷宮』は、若者たちが自らの運命を切り拓き、人類の未来を選び取る物語として堂々たる完結を迎えた。友情、喪失、希望が交錯する中で、シリーズが一貫して描いてきた「自由とは何か」「犠牲とは何か」という問いを見事に締めくくっている。派手なアクションと静かな余韻、その両方が心に残るラストだ。
・スタッフキャスト
監督:ウェス・ボール
脚本:T・S・ノーリン
原作:ジェイムズ・ダシュナー「メイズ・ランナー」シリーズ
製作:エレン・ゴールドスミス=ヴァイン、ウィク・ゴッドフリー
撮影:ギャリー・ショウ
音楽:ジョン・パエザーノ
出演
トーマス:ディラン・オブライエン
テレサ:カヤ・スコデラリオ
ニュート:トーマス・ブロディ=サングスター
ミンホ:キー・ホン・リー
ブレンダ:ローサ・サラザール
ホルヘ:ジャンカルロ・エスポジート
エヴァ・ペイジ:パトリシア・クラークソン
ギャリー:ウィル・ポールター
フライパン:デクスター・ダーデン
その他:アラン・テュディック、バリー・ペッパー ほか


