・映画の要約
2015年公開の『キングスマン:ザ・シークレット・サービス』は、英国上流階級のスパイ機関「キングスマン」と元ストリート少年エグジー(タロン・エジャトン)が主人公のアクションスパイ映画。メイソン卿(マイケル・ケイン)に見出されたエグジーは、厳しい訓練を経て正式なエージェントとなり、世界を脅かす狂気のテロリストヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)と対峙する。
ヴィジュアルとユーモア、そしてスタイリッシュなガジェットや流れるようなアクションが融合し、高度にエンターテインメント性に富んだ作品だ。エグジーが精神と肉体を磨き、真のスパイへと羽ばたいていく姿が爽快に描かれている。
・映画の時間
本作の上映時間は 129分。長尺ながらテンポ良く進み、飽きさせない構成になっている。
・ネタバレ(起承転結)
起:ストリートからキングスマンへ
エグジーは立派な教育機会から見放された家庭で育ち、非行に走りながらも過去の英雄だった父への憧れを抱いている。ある日、彼の人生はメイソン卿との出会いによって一変する。卿の正体は秘密スパイ組織キングスマンの面接官だった。

承:訓練と仲間との絆
エグジーは他の候補者とともに厳しい試験と訓練に挑み、身体能力と判断力、倫理観を磨いていく。ペンシルベニア豆を運ぶ妙技やテーラー道具を活かした戦術など、独創的な訓練シーンが続く中、仲間たちとの友情も芽生える。
転:狂気の計画、そして伝説の銃撃戦
スーパーデリバティーを演じるヴァレンタインは電波網を使って人類の暴力衝動を引き出し、人口削減を計画する。キングスマン本部に襲撃がかかり、エグジーは機転を利かせながら仲間をかばい、組織存亡の危機を迎える。
結:最後の立ちはだかる敵

エグジーはキングスマンの特殊スーツとガジェットを駆使してヴァレンタインの本拠に乗り込み、激闘を制して計画を阻止する。メイソン卿との師弟関係を胸に、エグジーは真のキングスマンとして覚醒する。
・この映画と似ている映画
- 『ティーン・エージェント』:若者がスパイ訓練を受け、非凡な活躍をする設定が共通。
- 『メン・イン・ブラック』:英国紳士でありながら裏で事件を解決する秘密組織の物語。
- 『キック・アス』:超人的なアクションとユーモアを両立させたヒーロー系エンターテインメント。
・この映画を見れるサービス
※配信状況は変更になる可能性があります。
・総評
『キングスマン:ザ・シークレット・サービス』は、スパイ映画ファンならずとも楽しめる、痛快・豪快・華麗なエンターテインメント爆発作である。英国紳士のクールさと、タロン・エジャトン扮するエグジーの軽快なキャラクターが融合し、従来の“スパイものでありながらコメディ要素をたっぷり含む”という新たなジャンルを確立している。
まず目を引くのは、スーツとガジェット。ネクタイが武器に変わる姿や、泡立つスーツによる防弾性能を最大限に活かす演出は、単なる道具を超えてキャラクター性になっている。それは007シリーズの伝統を引き継ぎつつ、独自の“かっこよさと遊び心”をもって、キングスマン流に新たに解釈されたものだ。
そしてアクション。教会での長回しワンカット銃撃バトルは、本作の象徴的なシーンとなっている。踊るような銃弾の軌道、音楽とシンクロする演出は、劇場で観る爽快感を最大化する構造だ。この長尺のアクション場面は、スパイ映画の定石に挑む覚悟とクリエイターの意欲を感じさせる。
しかし、本作がただのスタイリッシュアクションで終わらないのは、物語の軸が“師弟関係と倫理的選択”にあるからだ。エグジーがキングスマンとなる背後には、メイソン卿との関係と、父親の死がある。その葛藤が終盤に向けてますます炙り出され、英雄になることと殺し屋として生きることの狭間で揺れる姿が、観客の心に訴えかける。
また、ヴァレンタインという悪役も巧妙だ。環境問題や人類の未来を盾に、暴力による選別を正当化する彼は、単なる悪党ではなく狂気と理性の交錯したキャラクターとして存在感を放っている。その背後には社会的なメッセージがあるようにも感じられ、単一の「爽快さ」にとどまらない余韻を作品にもたらす。
気になる点としては、中盤の訓練シーンがやや長く感じられる瞬間もあること。ただし、それは物語の厚みや主人公の成長を描く上では必要な伏線でもあるため、大きなマイナスにはならない。
総じて、本作はスーツを着たアクションと心の動きを見事に融合させた「スタイリッシュ・スパイ・エンタメ」の代表格である。シリーズ1作目にとどまらず、その後の続編へと展開していく強い基盤を持っており、スパイ映画に新たな風を吹き込んだ作品として記憶されるだろう。
・スタッフキャスト
- 監督/脚本:マシュー・ヴォーン
- 製作:マーク・ミラー、ジェイ・アッシュクロフト、マイケル・G・ウィルソン、バーバラ・ブロッコリ
- 撮影:ベン・デイヴィス
- 編集:エディ・ヘミングウェイ
- 音楽:ヘンリー・ジャックマン
出演
- エグジー/ゲイリー・“エグジー”・アンウィン:タロン・エジャトン
- ハリー・ハート(ガラハッド):コリン・ファース
- ヴァレンタイン:サミュエル・L・ジャクソン
- メイソン卿:マイケル・ケイン
- ロキシー:ソフィア・ブテラ
- チャーリー:エドワード・ホルクロフト
- マーリン:マーク・ストロング
- チャーリー・ハート:ストリッパー・モース(カメオ)ほか