・映画の要約
2025年7月2日にAmazon Prime Videoで配信開始となった『ヘッド・オブ・ステート』は、アメリカ大統領ウィル・デリンジャー(ジョン・シナ)とイギリス首相サム・クラーク(イドリス・エルバ)が、大規模な陰謀に巻き込まれながらも、互いの確執を乗り越えて連携し、世界を救うアクション・コメディ作品です。
元アクションスターである大統領と、元SAS特殊部隊員の首相という型破りな組み合わせにより、かつてない“頭脳と拳の外交”が描かれています。
戦闘シーンあり、駆け引きあり、そして笑いありのスピード展開により、視聴者を115分間飽きさせません。🇺🇸🇬🇧
・映画の時間
本作の上映時間は 113分。テンポ良く流れる中にも、見せ場をしっかり配置した構成です。
・ネタバレ(起承転結)
起:確執と墜落
アメリカ大統領とイギリス首相という立場上反発し合っていた二人が、両国の同盟強化をアピールする共同飛行中に突如墜落事故に遭います。二人は敵地で“死んだ者扱い”となり、接触不能状態からの脱出劇が始まります。

承:敵地での連携
墜落後、CIA、MI6の協力者ノエル(プリヤンカー・チョプラ)が救出に奔走する一方、デリンジャーとクラークは共通の敵ウラジミール・グラドフ(パディ・コンシダイン)とその手先の暗殺者たちから逃れるため、共同戦線を張ります。
転:陰謀の核心へ
逃避行中にノエルが危機に陥った末、生き延びて真相を突き止めます。その陰には世界規模の監視ネットワーク「イーシェロン」を操ろうとする犯行計画があり、彼らは迫りくる陰謀を阻止しなくてはなりません。
結:絆と笑いの果てに
最終決戦の後、デリンジャーとクラークは偽装された死亡から生還を果たします。大統領はホワイトハウスへ戻り、首相はダウニング街へと帰還し、再会の食卓で友情を確かめ合います。エンディングには「Martyが生きていた」ことが明かされ、続編への布石を残す余韻もありました。
・この映画と似ている映画
- 『エアフォース・ワン』:大統領が直接危機に対峙し、アクションを展開する政治バディ物。
- 『ホワイトハウス・ダウン』:ホワイトハウス襲撃と奮闘する大統領要人を描いたノンストップアクション。
- 『ザ・スーサイド・スクワッド』:型破りなヒーローたちによる、笑いと暴力のバランスが共通するバディムービー。
・この映画を見れるサービス
※配信状況は変更になる可能性があります。
- Amazon Prime Video:2025年7月2日より独占配信
・総評
『ヘッド・オブ・ステート』は、一言で表現すれば「ゆるくて硬派なお笑い大統領バディ映画」です。
まず印象を左右するのは、主演のジョン・シナとイドリス・エルバの掛け合いです。デリンジャー大統領の陽気で軽口なキャラクターと、クラーク首相の硬質で冷静な振る舞いが互いに妙な化学反応を起こし、笑いと緊張のバランスを保っています。特に墜落直後の慌てた二人の“すれ違い救出劇”や、脱出ルートで互いの弱点を暴露し合うシーンは絶妙です。
アクション面では、イーシェロンに関わる防衛組織との銃撃戦やカーアクションを、監督イリヤ・ナイシュラーが手がけた前2作のように“密着&直感”スタイルで表現しており、戦場で味がする映像が巧みに構築されています。銃弾の飛び交う狭い廊下、敵車を背後から破壊する車両アクション、そして隠遁地での斬撃といった多様な戦いが、テンポよく連続し、115分の長ささえ感じさせない手腕が光ります。
そして、本作が単なる「高級バディアクション」ではなく社会性を持つものになっているのは、敵が描く「監視社会の暴走」というテーマです。要人の暗殺ではなく「情報統制」に挑む陰謀に対して、権力者同士の共闘が象徴的な意味を持ちます。笑いの中に忍び寄る冷ややかな現代批評が、作品を一段上のエンタメへと押し上げています。
唯一の懸念点としては、陰謀の背景説明がやや表面的に見える箇所です。イーシェロンの描写やグラドフの動機には若干のカット抜けがあり、「もう少し緻密な積み重ねが欲しかった」と思わせる瞬間が散見されます。しかし、それを補って余りあるのは主要3人(シナ/エルバ/チョプラ)による魅力的なアンサンブルと、遊び心を存分に楽しむ姿勢だと言えるでしょう。
エンドクレジット直後に提示された続編の可能性も含めて、本作は「遊びながら世界を救う」というパワフルなスタンスを保持し、視聴者に軽やかな余韻と開放感を与えます。この一点において、今年夏のPrime Videoの目玉作品として堂々と胸を張れる完成度です。
・スタッフキャスト
- 監督:イリヤ・ナイシュラー
- 脚本:ジョシュ・アッペルバウム、アンドレ・ネメック、ハリソン・クエリ
- 製作:ピーター・サフラン、ジョン・リカード
- 撮影:ベン・デイヴィス
- 音楽:スティーヴン・プライス
- 編集:トム・ハリソン=リード
出演
- ウィル・デリンジャー(アメリカ大統領):ジョン・シナ
- サム・クラーク(イギリス首相):イドリス・エルバ
- ノエル・ビセット(MI6):プリヤンカー・チョプラ・ジョナス
- ヴィクトル・グラドフ(ロシア企業家・陰謀の黒幕):パディ・コンシダイン
- アーサー・ハモンド(グラドフのハッカー):スティーヴン・ルート
- エリザベス・カーク(アメリカ副大統領):カーラ・グギーノ
- マーティ(CIA職員):ジャック・クエイド